試料研磨機の排水はろ過すれば流せるのか|ろ過で減るものと減らないもの

執筆者:

カテゴリ:

公開日:2026年8月20日

試料研磨機の排水をろ過して減るのは、SS(浮遊物質)です。金属スラッジ、削られた樹脂の粉、耐水研磨紙から出る砥粒といった、水中に浮遊している固形分がこれにあたります。水に溶けているものは減りません。アルコールをベースにした潤滑剤やダイヤモンドスプレー、溶け出した金属イオンは、ろ過を通す前と後でほとんど変わりません。pHも、ろ過によって大きく変化するものではありません。しかも試料研磨の排水は、使っている研磨紙・スラリー・潤滑剤が現場ごとに違うため、中身が一律ではありません。ですのでこの記事では「ろ過すれば流せます」とは書きません。減るものと減らないものを分けたうえで、自分の現場で確認する順番をお伝えします。

ろ過で減るのはSS、減らないのは水に溶けているもの

ろ過は、水中に浮遊している固形分を濾材で受け止める処理です。ですので「水に浮いているかどうか」で、減るものと減らないものがはっきり分かれます。

試料研磨機の排水で、ろ過によって減るのは次のようなものです。

  • 金属スラッジ(試料から削られた金属)
  • 削られた樹脂の粉(埋込樹脂から出るもの)
  • SiC耐水研磨紙から脱落した砥粒
  • アルミナ耐水研磨紙から脱落した砥粒
  • アルミナスラリー
  • 人工ダイヤモンドの砥粒

一方で、次のような水に溶けている成分は、通常のろ過では除去できません。

  • エタノールなどのアルコール類
  • 水に溶け出した金属イオン

アルコールは分かりやすい例です。ダイヤモンドスプレーや潤滑剤の多くはアルコールをベースにしていて、これは水に溶けます。溶けているものは濾材の目に引っかかりようがないので、どれだけ目の細かいフィルターを通しても、そのまま出ていきます。CODやBODといった有機物の指標は、こうした溶けている成分で決まる部分が大きいため、ろ過ではほとんど動きません。pHも同じで、ろ過は水の酸性・アルカリ性を変える処理ではありません。

ろ過前の排水 ● 金属スラッジ・樹脂の粉・砥粒 アルコール pH 溶けた金属イオン フィルター 固形分はここで止まる ろ過後の水 浮いていた固形分(SS)は下がる 溶けていたものはそのまま残る アルコール pH 溶けた金属イオン
ろ過前の排水 ● 金属スラッジ・樹脂の粉・砥粒 アルコール pH 溶けた金属イオン フィルター 固形分はここで止まる ろ過後の水 浮いていた固形分(SS)は下がる 溶けていたものはそのまま残る アルコール pH 溶けた金属イオン

図:ろ過で下がるのは水中に浮遊している固形分(SS)で、溶けている成分は前後で変わりません。

同じ0.05μmでも、取れるものと取れないものがあります

「何μmまで取れますか」という質問をよくいただきます。ただ、粒子径だけでは決まらない、というのが実際に試してみた結果です。

アルミナスラリーは、0.05μmまで細かくなっても当社のフィルターで取れます。ところが同じくらいの粒子径であるコロイダルシリカは、取れません。粒子径が同じでも結果が違うわけです。

理由は、コロイダルシリカが「集まらないように作られている」ことにあると考えています。コロイダルシリカの粒子は表面がマイナスに帯電していて、そのまわりに電荷の層ができます。粒子どうしが反発しあうので、いつまでも一粒ずつバラバラの状態を保ちます。分散が崩れずに長く使えることがコロイダルシリカという製品の価値なので、当然といえば当然です。

ろ過は、濾材の目そのものだけで粒子を止めているわけではありません。止まった粒子が層になって積もり、その層がさらに細かい粒子を受け止めることで、目より小さいものも取れていきます。粒子どうしが集まらないコロイダルシリカは、この層をつくらないまま通り抜けていくのだと考えています。

ここから言えることは一つです。カタログに書かれた粒子径を自分の研磨剤の粒子径と見比べても、取れるかどうかは判断できません。実際の排水を使ってろ過してみなければ、判断できません。

「流せるか」の答えが食い違うのは、放流先で根拠が違うからです

同じ「研磨排水を流してよいか」という質問でも、人によって答えが違うことがあります。これは、放流先によって適用される法令や基準、確認先が異なるためです。

公共下水道に流す場合は、下水道法と、その地域の自治体が定めた条例やそれに基づく基準が根拠になります。確認先は、放流先の自治体の下水道担当部署です。事業場の規模や使っている設備によっては届出が必要になったり、除害施設を求められたりすることがあります。

河川や海など公共用水域に直接流す場合は、水質汚濁防止法が根拠になります。確認先は自治体の環境を所管する部署です。ここでも都道府県や市の条例で、国の基準に上乗せした基準が定められていることがあります。

そしてどちらの場合も、基準の中身は地域によって違います。当社が具体的な数値をここに書いてしまうと、それを見て「うちも大丈夫だろう」と判断する方が出かねません。ですので基準値は書かず、確認先だけをお伝えしています。

なお、排水をまったく流さず、産業廃棄物として回収してもらっている現場もあります。その場合は放流の基準ではなく、処分費の話になります。

実際の研磨排水でろ過を試した結果

当社では、実際の試料研磨機の排水を使ってろ過の検証を行っています。#60から#1200までの研磨で出た排水では、ろ過後のSSが1mg/L未満という結果が出ています。目視でも、ろ過前の濁った排水が大幅に澄んでいることを確認できます。

この数値はSSについてのものです。同じ排水のCOD・BOD・pHがどうなったかは、この検証の対象ではありません。前の章で書いたとおり、これらはろ過ではほとんど動かないためです。

実験の様子は動画で公開しています。ろ過前の排水がどのくらい濁っているかは、数値よりも見ていただいたほうが早いと思います。

自分の現場で確認する順番

ここまでを踏まえると、確認する順番は次のようになります。上から順に進めていただくのが確実です。

  1. 排水がどこへ行っているかを確かめる。公共下水道か、河川など公共用水域か、それとも産業廃棄物として回収してもらっているか。ここで確認先が決まります。
  2. 研磨室で使っているものを全部書き出す。耐水研磨紙の種類、スラリー、潤滑剤、ダイヤモンドスプレー、洗浄に使うアルコール。容器のラベルに何がベースになっているか書かれています。
  3. 書き出したものを「水に溶けているもの」と「固形分」に分ける。固形分はろ過による除去が期待できますが、実際にどこまで除去できるかは排水によって異なります。水に溶けている成分は、通常のろ過では除去できません。
  4. その一覧を持って、1で決めた確認先に相談する。何が入っているか分かっている状態で聞くと、話が早く進みます。
  5. SSが問題になるようなら、実際の排水でろ過を試す。粒子径だけでは判断できないため、その排水そのもので確かめるのが確実です。

本記事で除去の対象としているのはSS(浮遊物質)です。水に溶けている成分やpHは変わりません。排水を放流できるかどうかは、排水の性状と各自治体の基準によって判断されます。

実際の排水でろ過できるかどうかは、その排水で試すのが確実です。無料でろ過テストを承っています。

ろ過テストのお申し込み >

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA