公開日:2026年8月20日
試料研磨機の排水で配管が詰まる場合、流れているのは「金属スラッジ」と「削られた樹脂の粉」の2種類です。試料研磨の現場に置かれている沈殿槽は小型の簡易的なものがほとんどで、水の勢いと仕切り板の構造から、この両方が下流へ流れていきます。溜まった分が配管の中で乾燥して固まり、流量低下と詰まりにつながります。
配管が詰まるまでに何が起きているか
金属組織観察の試料研磨では、試料を樹脂で埋め込んでから研磨紙で削ります。このとき排水に出ていくのは、試料から削られた金属スラッジと、埋込樹脂から削られた粉の両方です。研磨紙の番手が粗いほど、単位時間あたりの発生量は多くなります。
排水を流した瞬間に問題が起きるわけではありません。詰まりは時間をかけて進みます。流速が落ちる場所——配管の曲がり、勾配の緩い区間、槽の出入口——に溜まり、層になって内壁に付着します。ここで水が引いて乾燥すると、硬い層に変わります。
図:研磨排水で配管が詰まるまで
この乾燥と堆積が繰り返されると、通常の洗浄では落とせない状態になります。自動研磨機を使っている現場では発生量が多く、この進行が速くなります。材料試験室、品質保証部門、大学や研究機関の分析室など、組織観察を日常的に行う現場に共通して起きる話です。
簡易的な沈殿槽では止まりきらない
排水処理でよく使われるのが、槽に溜めて沈めるやり方です。構造が単純で動力もほとんど要らず、前段として置く意味はあります。
ただし、試料研磨の現場に置かれているのは小型の簡易的な沈殿槽がほとんどです。この分野に大掛かりな処理設備を入れる現場は多くありません。そして、この規模の沈殿槽では次のことが起きます。
- 水の勢いで舞い上がる:流入する水の勢いで、いったん沈んだものが再び巻き上がります。槽が小さいぶん滞留時間も短く、沈みきる前に出口へ達します
- 仕切り板の構造が単純:簡易的なものは仕切りが少なく、流れを十分に落としきれません
つまり、比重の大きい金属スラッジでさえ、この条件では完全には止まりません。「沈殿槽を入れたのに詰まりが止まらない」のは、装置が壊れているからではなく、沈殿という原理がこの規模とこの中身に対して力不足だということです。
削られた樹脂の粉が、さらに残りやすい理由
フェノール樹脂は、試料研磨の埋込材として最も一般的に使われるものです。試料を保持し、端面のダレを防ぐ役割を持っています。
この樹脂が研磨で削られると、細かい粉になって排水に混ざります。粉は水に溶けません。溶けないまま、水と一緒に流れていきます。
問題は比重です。金属スラッジが比重の大きさゆえに「条件が良ければ沈む」のに対し、削られた樹脂の粉は比重が小さく、沈殿という仕組みそのものが効きにくい。金属側より確実に残ります。試料研磨の排水は、この2つが同時に出ます。
見た目の上で厄介なのは、濁りの正体が判断しにくいことです。濁りが金属由来なのか樹脂由来なのかは、見ただけでは分かりません。上澄みが澄んで見えても、細かい樹脂の粉が残っていることがあります。
実際の排水でろ過を試した結果
FILTEXでは、鉄系材料をフェノール樹脂で埋め込んで研磨した実際の排水を対象に、ろ過試験を行いました。模擬的に作った水ではありません。
- 対象ワーク:鉄系材料 + フェノール埋込樹脂
- 加工内容:試料研磨(自動研磨機)
- 使用液:水
- 使用研磨紙:#240
#240の研磨紙による研磨で発生した高濃度の微細スラッジ含有排水が、目視で透明なレベルまでろ過されました。金属スラッジと樹脂の削り粉が混在した条件でも急激な目詰まりは起きず、連続して処理できることを確認しています。
現場で確認する順番
詰まりへの対処を検討するとき、確認の順番があります。
- ① 何が流れているかを分ける:試料の材質と埋込樹脂の種類を書き出します。樹脂埋込を行う試料研磨では、金属スラッジと樹脂の削り粉が同時に発生します
- ② いま何で止めているかを確認する:沈殿槽があるか、フィルターがあるか、何もないか。沈殿槽がある場合は、その大きさと仕切りの構造を見ます
- ③ 詰まっている場所を見る:曲がり、勾配の緩い区間、槽の出入口など、流速が落ちる場所に集中していれば、堆積が原因である可能性が高くなります
- ④ 自分の排水で試す:研磨紙の番手、使用量、埋込樹脂の種類は現場ごとに違います。他社の事例がそのまま当てはまるとは限りません
本記事で除去の対象としているのはSS(浮遊物質)です。水に溶けている成分やpHは変わりません。排水を放流できるかどうかは、排水の性状と各自治体の基準によって判断されます。
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